ストレスがかかるとお腹はどうなる?
2020/08/06
感情と腸のお話入門編
私たちは毎日食事をすることで、
エネルギーを得て、身体が正常に機能することができます。
この役割は腸をはじめとする消化管が正常に働くから成り立つことです。
実は、腸は栄養を消化吸収することだけでなく、
免疫や心の健康にも影響を与えていることがわかっています。
つまり、腸が正常に働いていないと
免疫力が衰えたり、気持ちにも影響を与えたりするのです。
ストレスのない正常なお腹の働き
食事のとき
みなさん、食事の時間です。
お腹が空いたあなたは、目の前にあるごはんを見て、おいしそうだと思います。
唾液が出てきました。
ごはんを口に運んで、ごはんをよく噛みます。
ごはんは唾液と混じりながら嚙み砕かれ、
吸収されやすい形へと変わっていきます。
私たちがごはんをかんでいるとき、
胃では大量の胃酸が分泌されます。
ごくりとごはんを飲み込むと
食道ではごはんを後から押し流すように胃へと運びます。
胃に到達したごはんは、攪拌され、細かく砕かれます。
その間に、胆のうや膵臓では、
消化酵素を多く含む胆汁や膵液を分泌します。
小腸に運ばれたごはんは消化酵素が含まれた分泌液と混ざり合い
さらに細かい分子となり、
小腸の粘膜から吸収されていきます。
(ここでは腸内細菌や免疫細胞が重要な役割を果たしていますが、
今回はその働きについては割愛します。)
最終的に大腸まで運ばれた食物は、
大腸で水分の90%を吸収したら、便として排出されます。
小腸から吸収された栄養分は、
血液にのって肝臓に運ばれると
肝臓で身体が必要する形へと変わります。
筋肉を動かす原料となったり、
ホルモン、抗体など身体が正常に働くために必要な物質が作られていきます。
食事以外のとき
食事以外のときでも腸は働いています。
その働きの一つが腸内のお掃除です。
食事以外の時間、特に眠っているとき
伝播性消化管収縮運動(MMC)(注1)と呼ばれる運動を引き起こす
波状の伝播性筋放電群によって、ゆっくりと腸内に残る残渣を下方へと押し流します。
この消化管の動きは、食道から直腸に向かっておきます。
それによって、胃に残っていた薬の殻や硬いナッツの破片などを
腸へと押し流してくれます。
また、このとき小腸にとって有害となる微生物も大腸へと押し流してくれます。
注1)伝播性消化管収縮運動(MMC):空腹時に腸が大きく収縮して、消化液の分泌を盛んにする運動
ここまでの働きは、
腸が脳からの指令を受けていなくても、独立して起こってきます。
実際に、脳がない動物でも栄養を取る方法として
腸の神経が単独で働いています、
しかし、脳から指令があると、特に感情が働いたときには、
腸のふるまいがかわってきます。
感情が動いたとき、腸はどうなるの
緊張して不安になるとトイレに行きたくなる
悲しいことがあったとき、食事がのどを通らなくなる
嫌なことがあって腹がたってついているとき、胃がむかむかする
そういった経験をしたことはないでしょうか?
実際に、感情がゆさぶられているとき、
腸はふつうと違った動きをします。
怒っているときお腹はどうなる
怒っているときのお腹の動きをみてみましょう。
友だちと楽しくごはんを食べていました。
ところが、ちょっとしたことで口論になってしまいます。
あなたは、いらだちを感じながら、
早く食事を切り上げようと考え始めます。
この時の胃は、楽しくごはんを食べていた時とは違う動きをしています。
さっきまで大きくゆっくりと動いて食べ物を攪拌している胃は動きを止め、
細かくピクピクと痙攣し始め、
食事を消化するという役目を果たせなくなります。
胃は食べ物をうまく押し出せなくなり、
食べ物は胃の中に長い間とどまることになります。
食事が終わった後も気分が晴れないままであれば、
ごはんは寝るときになっても胃の中に残ったままかもしれません。
そうなってくると眠っているときに起きるはずだった腸の動きも起きてきません。
腸は浄化されないままです。
そして、翌朝、消化されないままの食べ物のせいで
胃もたれを感じながら目覚めることになります。
怒り以外の感情でおなかはどうなる
怒り以外の感情が起きたときも、おなかは変わった動きをします。
たとえば、ショックや悲しみに暮れているとき。
胃や腸の動きは緩慢になります。
そのため、食欲はなくなり、便秘がちになります。
失敗できないような極度の緊張状態のとき
腸の動きは活発になります。
食べ物を消化したり、吸収したりすることにエネルギーを使っている場合ではないと脳が判断し、
早く体内のものを排出させようとします。
緊張すると急にトイレに行きたくなるのは、そのせいです。
いずれも感情が腸の動きを変えてしまいます。
つまり、感情にとらわれていたら、
食事から十分なエネルギーを得ることができなくなってしまうかもしれないのです。
なぜ、感情によっておなかの動きが変わるのか
感情によって、おなかの動きが変わるのには、
人類の進化の過程が関係しています。
人類の長い歴史をみると
人類が食べものにありつくということは、なかなか難しいことでした。
農耕が発展する以前の人類の暮らしは、
主に狩猟です。
何千年から何万年もの長い間、私たち人類は
いかに食べものを得るかにエネルギーを注いできました。
生活すること自体が命がけの時代が長らく続いたのです。
このような命の危険と隣り合わせの状況では、
食べものの消化や吸収にばかり、エネルギーを注ぐことはできません。
敵から身を守るために「逃げる」「戦う」といったことに
効率よくエネルギーを使えるよう
命の危険(恐れ)を感じたときに即座に対応できるよう
身体が進化していったのです。
しかし、現代の生活はどうでしょう。
食べものを得るために敵から逃げることも戦うことも必要はありません。
つまり、以前は恐れを感じたときに必要としていた身体の反応はもはや不要のものとなっています。
とはいえ、必要ではなくなったからといって、
その機能が私たちからなくなってしまったわけではないのです。
このような身体の反応が必要ではなくなったのは、
人類の長い歴史を振り返ると、ごく最近のことです。
人類以前の生物にもおそらく備わっていたのではないかということを考えると更にそうかもしれません。
そう考えると、恐れや不安、緊張したときのお腹の働きは、
今も残っていても当然のことでしょう。
そう考えると、私たちの胃腸に本来の働きを発揮してもらうためには
いかに穏やかに過ごせるのかということが重要なのかもしれません。
同じような状況であっても、
ストレスで身体に不調をきたす人もいれば、
全く平気な人もいます。
なにに対して、どのようにストレスを感じるのかは人それぞれです。
ストレスは自分ではなかなか気づきにくいもの。
日ごろのケアを心掛けましょう。
昔の人は知っていた。感情が身体に及ぼす影響
感情を表す慣用句みなさんは思いつきますか?
少しあげるだけでも色々あります。
腹が立った→怒る 癪に障る
はらわた煮えくりかえる→激昂する 怒り心頭
肝がすわる→度胸があり、動揺しない
腹の虫の居所が悪い→機嫌が悪い
これは日本に限った話ではありません。世界的に見ても感情を表現する言葉があります。
Stomch tied up in knots 胃が締め付けられるような感じ
Gut-wrenching experience はらわたが引き裂かれるような経験
Butterflies in your stomach そわそわして落ち着かない
こうしてみると昔の人は自分が感情的になったときに体の一部の感覚が変化していることを鋭敏に感じ取っていたのですね。
内臓の感覚を今よりももっと感知できていたのかもしれません。
感じ取っていたということは自分がまさにその時どう思っていたか(感情がどうなっているのか)を気づきやすかったかもしれません。
昔と比較して、現在は病気が増えています。特に感情が原因となるストレスにまつわる病気が増えています。
別の機会に話ますが、過敏性腸症候群、周期性嘔吐症、逆流性食道炎、と言った消化器疾患もそうです。
なかにはいっけん腸と関係のないような病気も、感情が直接的ではなくとも関係して発生することがあります。
神経疾患や代謝性疾患、炎症性疾患、アレルギー疾患などです。癌も含まれます。
なぜこれほどまで増えてしまったのでしょう?
原因の一つとして考えられるのは、多くの人が感情をうまく処理できなくなったことにあります。
本当は腹が立って仕方がない時でも、その感情を表に出さずにため込んでしまうことはありませんか?
そうしなければ人間関係がうまくいかないと感じるからでしょう。
辛くても頑張らなければいけないと体を犠牲にしてまで無理をすることが増えたからかもしれません。
誰かから認めてもらうために本当は嫌で仕方がないことを我慢しているのかもしれません。
さらに最近では自分がどう感じているのか分からなくなっている人が増えています。
自分の感情を感じないことにすれば、多くのことをこなせるようになったり、人から信頼を得やすくなることもあります。
しかし、感情を感じなくなった影響で自分が何が好きなのか?何が嫌なのか?
自分のことなのに自分の気持ちさえわからない人が増えています。
その代償は大きく、常に体に負担をかけ続けることもあります。
病気になって働けなくなることさえあります。
特に所謂いい人は自分の気持ち、感情を押し殺していることが多いです。
現代医療では解明されていないお腹の症状は多くあります。
胃腸症状を抱え病院で検査をしたけれど問題がなく医師から「気持ちの問題です。」とだけ言われた人もいるでしょう。
気持ちの問題と言われて思い当たることがあっても解決が難しいと感じる人もいるでしょう。
気持ちの問題と言われても全く見当がつかないという人もいるかもしれません。
「こんなに辛いのに。」と思うような症状の方にとっては、医師の話にがっかりしたかもしれません。
気持ちの問題を扱うことは医師であってもまだまだ理解できない領域が多く、扱える人はほとんどいません。
しかし、その気持ちの問題を放置すれば後からもっと大きな病気になる可能性もあるのです。
現時点で特にお腹に不調を感じていない人でも、至って健康な人でも、感情によってお腹の動きは絶えず変化しています。
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