幼少期のストレスは大人になって過敏な腸になる?
2020/08/27
ストレスが原因でいろいろな病気になることはよく知られています。
最近では、こういったストレスを起因とした病気が増えてきました。
その一つがIBS(過敏性腸症候群)です。
この病気になった人は、
頻回に起こる下痢や腹部の不快感から
日常生活に支障をきたすことがあります。
血液検査、内視鏡などの検査では異常が見つからず、
特に命に関わる病気ではないので、
病院の医師からも具体的な提案がなく困っている方もいるでしょう。
病院では対症療法と言って症状に応じた治療をしますが、
治療自体が確立されてはいません。
とはいえ、ストレスが原因で起こっているのならば、
ストレスについての理解とそのストレスの根本の改善によって
症状が変化するかもしれません。
目次
IBS(過敏性腸症候群)とは
IBS(過敏性腸症候群)はどういった病気なのでしょうか?
貧血、血便、体重減少、微熱などの症状がなく、
血液検査、大腸検査(内視鏡、造影検査)で異常がなく、
他の疾患(甲状腺、糖尿病などの内分泌疾患)や
寄生虫感染などがないことことを確認した上で
以下のローマⅢ基準が当てはまるとIBSとなります。
IBSの診断基準(ローマⅢ基準)
IBSは最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、
下記の2項目以上の特徴を示す場合診断されます。
1)排便によって症状がやわらぐ
2)症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
3)症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
IBSは、日本人の10〜15%ぐらいの人が罹患しており、年々増加しています。
世界的にみてもアメリカなどいわゆる先進国に多くみられます。
また、ウイルス性腸炎や細菌性腸炎になったことが引き金となってIBSになる場合もあります。
最近ではIBSの発症に幼少期のストレスが関わっているのではないかと考えられはじめました。
それには大きく二つの理由があります。
IBSの発症にストレスが関与していると考えられているわけ
腸が敏感になる理由の一つは、
幼少期にストレスを経験することで、
脳がストレスに対して過敏に反応するようにプログラムされてしまっていることです。
これによりストレスを感じた脳は腸へと信号を送ります。
信号を受けた腸は速やかに内容物を排出しようとして激しい蠕動運動がおこします。
そのため下痢をしたりおなかの痛みが出たりするのです。
もう一つの理由は
乳児期に獲得した腸内細菌叢の種類の影響により
腸の反応をを起こしやすくしていることです。
腸内細菌の代謝産物が脳の成長に大きく関与することが分かっています。
そして、腸内細菌の種類によって脳への影響の仕方も違うのです。
幼少期のストレスが腸を敏感にさせる理由
そもそも家庭環境で抑圧されて育った子供は
のちに精神疾患を引き起こしやすい傾向があると言われてきました。
虐待はもちろん、両親の離婚や不和、いじめを体験した子供は
大人になってから不安障害や抑うつになりやすくなります。
実際に幼少期のストレス経験が子どもの脳に永続的な悪影響を及ぼす
という科学的な証拠も見られます。
最近では、その種の脳の変化が
IBS(過敏性腸症候群)のような腹部症状の発症にも影響する
と考えられ始めています。
幼少期の母親との体験が子の性格、性質を変化させる
ポール・ブロツキーの実験①
まずは、エモリー大学の神経学者ポール・プロツキーの行った実験を紹介します。
この実験によると、幼少期の体験が大人になって不安を増大させたのです。
では、実際の実験を見ていきましょう。
実験室で育てられたラットを用いた実験です。
遺伝子学的に同一のラットであっても、
子どもを育てるのが得意なラットと子どもを育てるが苦手なラットがいます。
子どもを育てるのが得意なラットは、
子どもをよく舐めて毛繕いをしたり、
子がしっかりと母乳を飲めるように促す体勢を取ったりします。
いっぽう、子どもを育てるのが苦手なラットは
基本的に子を放置して、
毛繕いをしなかったり、
母乳を自分から積極的に与えようとしません。
そこで、親によく面倒をみてもらった子ラットと
親からあまり面倒をみてもらわなかった子ラットを
それぞれ観察し、成長してからの行動変化を見ました。
すると、大切に育てられたラットは
ストレスに動じないリラックスした大人のラットに成長し、
社交的であったり、未知の場所であっても積極的に探索するといった行動が見られました。
しかし、あまり親から面倒をみてもらえなかったラットは
成長したときに不安や抑うつによると思われる行動をとり、
臆病で引きこもりがちとなり、孤独を好みました。
母親の子ラットの育て方の違いによって、
成長後の行動や性格が違っていたのです。
さらにこの成長した両方のラットに対して
数分間拘束するというストレスをかけました。
そして、ラットのストレス状況を評価するために、
ラットのストレスホルモン(コルチコステロン)の数値を測定しました。
すると、健全に養育されたラットはコルチコステロンの数値が低く、
ストレス反応を抑える抑制ホルモンもみられていました。
しかし、養育されていなかったラットは
脳の視床下部にあるストレスホルモンの元となる物質やコルチコステロンの分泌量が多くみられました。
またGABAとそのレセプターを含む神経回路など
ストレスをコントロールするシステムも低下していたのです。
つまり、あまり親から面倒をみてもらえなかったラットは
しっかりと養育されていたラットよりも、
よりストレスを感じやすくなるように身体が変化していたということです。
また母親自身のストレスが強くなるほど
子の養育ができなくなるということもわかりました。
もともと養育が得意なラットの母親に
一定時間騒音レベルの音を聴かせ続けるというストレスをかけました。
すると母ラットの養育にかける時間が徐々に少なくなったのです。
子の毛繕いをしなくなり
子を無視する行動が見られ始め、
さらには子供を食べる個体まで現れました。
つまりは、母親にストレスがかかると
どのような性質のラットであっても子育てが難しくなり、
結果的に子のストレスに繋がっていると考えられます。
子ども時代にストレスがかかると腸が過敏になる
ポール・プロツキーの実験②
またプロツキーは次のような実験も行っています。
生後間もないラットの赤ちゃんを、
数週間にわたり1日3時間、母親から引き離しました。
するとラットの赤ちゃんはのちにIBS様の腹部症状を起こすことがわかりました。
また、先ほどの子どもの頃に母親から十分な養育を受けなかったラットにも
大人になって不安や抑うつの行動を起こすだけでなく、
IBS様の症状を起こす個体が見られました。
子ラットに母親から面倒をみてもらえるかどうかというのは
生死に関わる重大な問題です。
母ラットから面倒をみてもらえていないということがいかにストレスになり、
そういった経験が腸を過敏にさせているのです。
ストレスを感じると腸はどうなる
人はストレスを感じると、
脳の視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)を分泌します。
このCRHはあらゆる臓器に働きかけ、緊張状態やストレスモードにします。
ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が増え、
結果として、副腎皮質からコルチゾールやエピネフリンなどのストレスホルモンを分泌させます。
ストレスホルモンが一定レベルを超えると
腸で収縮回数を増やし内容物を排泄しようとしたり、
腸壁の透過性を変化させ免疫反応を起きやすくします。
これによって下痢になるのです。
下痢になると腸内細菌の数は激減します。
特に乳酸菌などの人にとって良い働きをしてくれる菌が減少します。
加えてクロストリジウム属などの病原菌となる菌が優位になることがあります。
またストレスによって分泌されたノルエピネフリンの作用によって
これらの病原菌は攻撃性を増すのです。
そして、これらの病原菌を排除するため免疫系が働き、
さらに下痢症状が起きやすくなります。
子育て中のお母さんへ
ここまでの話で
母親のストレスと子どもの幼少期の体験(ストレス)がいかに重要かがわかるかと思います。
ストレス社会といわれる現代、
しかも昔と違い、核家族が増えてきています。
子育てをするお母さんのストレスは甚大でしょう。
しかも、ストレスがあったとしても、
子育てを放棄してしまうわけにもいきません。
たとえ、どんなに子どもをかわいいと思っていたとしても
子育てから解放されたいと思う気持ちはだれしも持つものだと思います。
出産後、生活が変化し対応に追われ、
うまく行かないことにイライラすることも当然あるでしょう。
人によっては、そういう自分が嫌いになるかもしれません。
しかし、イライラしている自分を責めたり、
完璧を目指してしまっては、
さらに自分で自分にストレスをかけてしまいます。
子どもというものは、お母さんの感情を敏感に察知します。
それは生まれたばかりの赤ちゃんであっても同じです。
お母さんが悲しんでいることは自分のせいではないかと感じます。
お母さんが無理をして苦しむことは自分のせいではないかと感じます。
大切なのはイライラしている自分を責めるのではなく、
自分はよくやっていると認めることです。
「大変な状況の中、これだけよくやれている」と
自分で自分のことを認めることが改善の第一歩です。
母親がストレスに対応しようと無理をし、
母親が自分を責めるほどストレスが増大し、
結果的に子どもに影響を与えてしまいます。
もし、子育てでイライラすることがあれば、
感情カウンセリングを受けてみることも改善の手段かもしれません。
ただでさえ忙しいのに、そんな時間はとれないと思うかもしれませんが
自分を大切にする時間を持つことは重要です。
人にはなかなか話せない悩み、
特に親族や友人、親しい人ほど自分が思っていることを
話しにくいこともあるでしょう。
周りの人があなたのために良かれと思っていったアドバイスが
自分にできないことを責められて辛いと感じるようであれば
それはあなたのせいではなく、
疲れがたまりすぎているせいです。
まずは、どうにかして自分をいたわる時間を確保してください。
お母さんが安心すれば、赤ちゃんも安心してのびのびを成長できます。
母乳で善玉菌が増える
赤ちゃんは生まれる時お母さんの産道を通ります。
母親は出産が近くなると膣内の腸内細菌叢が変化します。
さまざまな種類の細菌が住みついていた膣内ですが、
この時期は特に乳酸菌類が増えています。
そのため自然分娩で生まれた赤ちゃんは
この乳酸菌を多く含む細菌叢にさらされることになります。
この母親から得た乳酸菌類は
母乳に含まれる乳糖や特殊な炭水化物の代謝分解します。
母乳には
プレバイオティクスという特定の腸内細菌を増やす物質が含まれます。
プレバイオティクスとは、腸内細菌のエサになる難消化性の食物成分のことです。
代表的なものに複合炭水化物のオリゴ糖やヒトミルクオリゴ糖(HMO)と呼ばれる炭水化物があります。
HMOは本来人は腸では消化できません。
HMOは小腸末端や大腸で
乳酸菌類によって短鎖脂肪酸と他の代謝産物に分解され
腸に吸収されていきます。
赤ちゃんは母乳を飲むことで腸内の乳酸菌類は数が増えていきます。
お母さんからもらった細菌のおかげで
赤ちゃんは母乳から効率よく栄養を受け取ることができるようになります。
このことは脳の成長にも大きく寄与しています。
実際に母乳で育つ期間が長いほど脳が大きく発達しているとの報告もあります。
また、乳酸菌が増えることで他の有害な細菌の成長を妨げ、
まだ免疫機能の整っていない乳児の腸内環境の調整と感染防御に役立つのです。
母親のストレスが赤ちゃんの腸内細菌叢を変化させる
妊娠中の母親がストレスを受けると、
母親の膣内の細菌叢の構成が変わってしまいます。
特に乳酸菌が減ります。
乳酸菌が減ると、母親の膣内の酸性度が変わります。
それによって乳酸菌以外の菌が増えていきます。
結果的に出産時に母親から赤ちゃんに受け渡される乳酸菌の数が少なくなります。
マウスの実験では、
母親がストレスを受けた場合、
新生児の脳の発達を促進させるアミノ酸が不足していることがわかっています。
ひょっとすると、腸内細菌が作る代謝産物に影響されているのかもしれません。
また帝王切開で生まれた人間の子どもは、
乳酸菌が乳児の腸内でコロニーを形成するまでに通常よりも時間がかかることがわかっています。
直接母親から受け渡される乳酸菌との接触がないことが関係しているのでしょう。
また、クロストリジウム・ディフィシルが腸内に蔓延りやすくなります。
このクロストリジウムはストレスにさらされた時、
腸内細菌叢のバランスを崩し優位となり腸を攻撃しやすくなります。
また母親が周産期に抗生物質を使用することで膣内の細菌叢が乱れていたり、
子が幼少期に抗生物質により腸内細菌叢が撹乱されると
長期的に腸内細菌が不安定になります。
腸内細菌叢のバランスを決めるもの
人の腸内細菌は3歳ぐらいまでは多様性が低いとされています。
それ以降は成長すると共に徐々に種類を増やし、定着し、安定していきます。
ただ、どのような菌が増え、
どのような菌が腸内で優位に働くのかは
人によって大きく異なります。
乳酸菌類は母乳の代謝吸収に有効に働きますが、
それ以外の細菌も食事からとった栄養を腸で吸収しやすい形に変化させる役割を持っています。
たとえば、ファーミキュテス門、プロテオバクテリア門という種類の細菌は
脂肪を分解する働きがあります。
そのため脂肪分を多くとるとこれらが増殖して
腸や脳で炎症を起こしやすくなります。
いっぽう、これらの細菌が腸に住み着いていることで
脂肪分の多いものがつい食べたくなってしまうのかもしれません。
子どものころから食べている食べ物の影響や
子どものときストレスによって
腸内細菌のバランスが変わってくる可能性があるのです。
腸内細菌叢が心身に与える影響
人の腸内細菌のバランスは人によって全く異なります。
腸内細菌が作る代謝産物は
脳の発達や神経同士の連絡をするシグナルを作ります。
腸内細菌の代謝産物が脳へ影響し、
脳で感じた感情が腸の動きに影響するといった相互関係ができます。
リラックスしているとき
脳からの腸の連絡は安定したものですが、
ストレスが加われば、腸の活動を過敏にしました。
リラックスを促すホルモン、セロトニンにも影響します。
ある種の腸内細菌が作り出した代謝産物をクロム親和性細胞が検知し、
迷走神経を介して脳に送られるセロトニン分泌を増やします。
そう考えると
腸内細菌が心身の安定によく関わっていることがわかります。
先ほどもお伝えしたように
母親のストレスの影響で子供の性格性質が変化したり、
腸が敏感になります。
腸内細菌の観点からも
母親のメンタルヘルスが将来の子どもの健康にいかに重要であるかがわかります。
これから出産を控えている人はストレスを溜めない生活を心がけましょう。
出産と腸内細菌叢
腸内細菌の獲得の面では自然分娩が望ましいと考えます。
しかし実際にはそうもいかないこともあります。
昔と比較し安全に子どもが生まれるようになった背景には医療の進歩があります。
昔であれば無事に生まれてくることができなかったことも多くありました。
現在は多産も増えていますし、
さまざまな影響で分娩時の母子の負担が大きくなる場合があります。
そうなると必ずしも自然分娩が良いわけではありません。
今回の話を読んで
帝王切開で子どもを産んだことや
子どもを母乳で育てられなかったことを
悲観する必要はありません。
安全に子どもを出産するためにはやむを得ないことも十分あります。
確かに良性の細菌の獲得の面で不利かもしれません。
しかし、子どもの成長は出産や母乳での育成だけが全てではありません。
いろいろな要因が影響しています。
子どもは母親の愛情だけでなく、
父親や兄弟、祖父母など家族の愛情によって情動を形成していきます。
赤ちゃんもお母さんも周りの家族も
みんながリラックスして伸び伸びを過ごせていれば、
赤ちゃんにとっても赤ちゃんの腸にとっても
良い環境になるかもしれません。
脳がリラックスすれば、
腸に送られるシグナルも安定し、
腸にとっていい菌がすみつきやすくなるかもしれません。
いずれにせよ、
現在の食生活が偏りがちな方は腸内細菌も偏っているかもしれません。
まずは、自分がどんなものを食べているか意識をすることです。
ストレスが多い時どんなものを食べているでしょうか?
それから、より自然なもの(無農薬のもの)、人工的なものが少ない方がいいでしょう。
どの国でも、発酵食品があります。
日本にももちろんありますよね。
うまく活用して腸内細菌のバランスを整えましょう。
遺伝子学的には日本人に馴染みのある食べ物の方が消化吸収に有利かもしれません。
楽しみながら、お腹の中と体の健康を育てていきましょう。
IBSに悩んでいる方へ
現在IBS(過敏性腸症候群)に悩んでいる人は、
まず今この症状によって日常生活のどんなことが困るのか考えてみましょう。
会社に行く途中でお腹が痛くなるという方、
会社にスムーズに行けないことでどのようなことが起こるのが不安ですか?
時間に間に合わず、仕事に支障をきたしてしまうことでしょうか?
遅刻をして人から信用されなくなることでしょうか?
そもそも職場の雰囲気になじむことができず、辛いと感じてはいませんでしたか?
そもそも上司と折り合いがつかず、会社に行くこと自体苦痛であったりしませんでしたか?
何が起きて困るのか考えてみてください。
そこにストレスの原因となっている事柄の
重要なヒントが隠れているかもしれません。
ストレスがこの症状を増悪させています。
ですから本当は何にストレスを感じているのか客観的に見つめてみましょう。
一人で実践するのは難しいと感じるかもしれません。
ストレスを感じている自分を責めてしまうということもあるかもしれません。
その時は感情カウンセリングを活用してみてください。
安心できる場で自分のことを話していると、
ふと今まで自分で気がついていなかった本当の気持ちに気づくかもしれません。
ただ、人に話すだけでも心が軽くなることもあります。
ひょっとすると今あるこの症状は
自分がこれからどう生きたいか見つめ直すチャンスかもしれません。
ストレスを抱えながらこれまで通りの社会に適応し続けるのか、
それとも自分の本当に願っている生き方にシフトしていくか。
あなたはこれからの人生をどう生きていきたいですか?
さきほど幼少期の体験や出産時の影響によって過敏な腸になるというお話をしました。
ただ、同じ体験をしたからみんなが同じ状況になるわけではありません。
そして、今ある症状の原因が幼少期にあるからといって
いまさら幼少期に戻るってやり直すことはできません。
そうなると自分でストレスに対処していくしかないのです。
そのためにも、何が自分にとってストレスになっているのか、
見つめなおすことは重要です。
周囲の人からどう思われているか心の中でいつも怖いと感じていたということに気づく人もいるでしょう。
そういう人の場合、人からよく思われるために、
他人を優先して自分を犠牲にするような行動をしがちです。
人からどう思われるかが怖くて本来自分の言いたいことを言えなかったり
テストではいい点を取らなければならなければと自分にプレッシャーをかけたり
人前で話すときには、周りの評価ばかりが気になって実力を発揮できなかったり
誰かといっしょにすごすとき、心からリラックスできなかったり
そう言うことが積み重なると体調を崩してしまいます。
まずは、そういう自分に気づくことが改善の第一歩です。
これからの人生を楽しく、生き生きと過ごすことができるように
一歩踏み出してみましょう。
IBSの食事療法
過敏性腸症候群の方の中には食事によって症状が変化する人もいるのではないでしょうか?
人によっては、本来腸に良いとされる特定の食べ物を食べると悪化してしまうことがあります。
IBSの原因は人によってさまざまですが、合う食事も人によって違います。
ですから、一つの方法に固執せずに自分なりにあうものを柔軟に探すことと、
制限をしすぎて本来必要な栄養が摂れなくなってしまわない様に、
リラックスして楽に考えて実践することが大切です。
今回は過敏性腸症候群の方に推奨されている食事についてと腸内細菌についてお話します。
現在過敏性腸症候群の食事療法について様々な研究がされています。
①低フォドマップ(FODMAP)食
②グルテンフリー食
③食物繊維
④プロバイオティクスのなどの研究です。
低FODMAP食
FODMAP食とは
フォドマップ(FODMAP) とは、以下の頭文字を組み合わせた言葉になります。
Fermentable:発酵性の
Oligosaccharides:オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖)
Disaccharides:二糖類(ラクトース)
Monosaccharides:単糖類(フルクトース)
And
Polyols:ポリオール(ソルビトール、マンニトール、イソマルト、キシリトール、グリセロール)
FODMAP食の例
大麦・小麦・ライ麦などの小麦類とその加工品、大豆、
エンドウ豆、インゲン、ヒヨコ豆、レンズ豆、アズキなどの豆類、ナッツ類、
タマネギ、ネギ、ニラ、ニンニクなどネギ類、
ヨーグルトや牛乳に多い乳糖、
ハチミツや果物に多い果糖、
人工甘味料を使った菓子などに多いソルビトール、キシリトールなど
FODMAP食が腹部膨満と腹痛を引き起こす
通常多くの方はFODMAPを問題なく消化・吸収することができます。
しかし、IBSの方の中には、
FODMAPの一部を小腸で吸収することができず
小腸に残ってしまうことがあります。
この小腸内に残存したFODMAPが様々な症状を引き起こします。
小腸に残ったFODMAPは、小腸内へと水分を引き寄せ過剰に水分を滞留させます。
小腸内に過剰な水分が貯まることで腹部膨満感や痛みになり、
下痢の原因にもなると考えられています。
また小腸で吸収されなかったFODMAPは、大腸に移動し腸内細菌により消化されます。
この時にガスが発生して消化管内に滞留し、
腹部膨満や痛みを発生させると考えられています。
このFODMAP食は全て絶対に食べてはいけないというものではありません。
また食べても大丈夫な程度の量もあるようです。
腸の消化吸収機能と腸内細菌の処理能力が関係するのではないか
と私は考えています。
FODMAP食の全ても除外することは難しいですし、
人によって症状のでかたが違うので、
これは症状が出やすいなど思い当たるものから始めてみてもいいかもしれません。
先ほどお伝えしたように
出産方法や幼少期の経験などによって腸に住み着く腸内細菌の種類が変わってきます。
もちろん腸内に常に同じ菌がい続けるわけではありませんが、
その細菌が腸に住みやすい特徴が幼少期から作り上げられています。
腸内細菌の種類が違うのであれば、
食べ物の処理能力も異なっても不思議ではありません。
人によってFODMAPを消化できる機能は異なると考えられています。
消化できる上限があり、
その上限を超えてしまうと処理能力を超えるので
消化器症状が現れると考えられます。
一つ一つのFODMAPを摂取して症状がでない場合でも、
それが徐々に蓄積していくと、消化器症状が現れる可能性があるそうです。
また累積するということは、
FODMAPが含まれる食べ物の種類に加え、
FODMAPの量を確認するといいのかもしれません。
低FODMAP食の実践方法
低FODMAP食は、制限食ではなく、
自分の消化器症状の原因となる食品を探すためのツールとなります。
実践方法がありますので、載せますが
基本的には医師や栄養士と相談しながら
栄養不足にならない様に実践することが重要だと思います。
低FODMAP食の実践方法は、
⑴制限期間、⑵チャレンジ期間(再導入期間)、⑶維持期間の3つに分かれます。
⑴ 制限期間 (2-4週間程度)
制限期間では、FODMAPが含まれる全ての食品を2〜4週間程度取り除きます。
もし、制限期間を経て症状が改善しない場合は、
FODMAPを食事から取り除けていなか、
食事以外の要素(ストレスなど)が消化器症状を引き起こしている可能性があります。
この場合は、
3-5日程度食事と症状の記録をつけて、
症状が出た際の食事にFODMAPが含まれているかを確認します。
もしFODMAPを取り除けていても消化器症状が出る場合は、
低FODMAP食以外のアプローチを模索しましょう。
感情カウンセリングでストレスの原因を探り解消することもお勧めします。
制限期間で消化器症状が改善した場合は、再導入期間に進みます。
多くの方はこの制限期間のみを長い間続けてしまいます。
栄養摂取の面でとても危険ですので固執せずに一旦やめることも重要です。
⑵チャレンジ期間(再導入期間) (6-8週間程度)
チャレンジ期間(再導入期間)では、
低FODMAP食を続けながらも、
FODMAPの5つのグループが含まれる食品を順々に試して、
どのFODMAPグループで消化器症状が出るか確認します。
少量から1品ずつ試していきます。
症状が出なければその食品は食べても問題ありません。
症状が出た場合は、
症状が出る前の分量まではその食品が許容できる
もしくは
全く許容できないのどちらかと判断できます。
FODMAPが含まれる全ての食品の反応をチェックしていくと、かなりの時間がかかります。
自分で思い当たる食品から試してみたり、
逆によく食べていたものから試してみるといいかもしれません。
過去の経験からすでに消化器症状が出ることがわかっているものは
無理に試さなくてもいいと思います。
⑶維持期間
維持期間では、
制限期間で特定したFODMAPグループに含まれる食品を避けつつ、
栄養バランスの良い食事を続けます。
アメリカで実践された
IBS患者に対する低フォドマップ(FODMAP)食の効果を検証した
これまでの観察研究・ランダム化試験では、
低FODMAP食により、50-76%のIBS患者さんで消化器症状の改善が認められています。
低FODMAP食は、
非常に複雑な食事療法で、適切に行われないと効果が得られないことも多く
栄養不足などに繋がることもあり注意が必要です。
現在、日本の管理栄養士の間でも少しずつ低FODMAP食の認知度が高まり、
少しずつですが、病院などでの食事指導にも取り入れられるようになってきているようです。
実際に低FODMAP食を行う際は、
ぜひ主治医の先生や担当の管理栄養士さんに相談して頂けましたらと思います。
ヘテロクリニックは自分で自分の健康を守るお手伝いをしています
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